Uのこと
2012年9月13日 21時40分45秒 (Thu)
ペダルを漕いで
自転車を漕ぐ。漕ぐ。漕ぐ。補助輪を外して、思いっきり漕ぐ。
Uは近所の公園で自転車を乗り回していた。夢中な顔だ、それ以外のことに興味が全くないとでも言いたげな。
傍らには彼の父がいた。キャッチボールやサッカー、そしてこの自転車。Uは全て父から教わった。Uにとって父は師匠のような存在でもあった。
公園には広場の周りをぐるっと一周するようなコースがあり、Uはそのコースを何度も何度も回っていた。
途中、Uは父に「競争しよう」と提案した。父は少し渋ったのち首を縦に振る。Uは顔を輝かせ、「よーいドン!」と叫び地面を蹴った。
回る。回る。車輪が回る。
Uは自転車が好きだった。父が好きだった。秋の午後の涼しい澄んだ空気が好きだった。
何度か公園を回った末、Uは転んだ。ブレーキを掛けたときの反動に体がついてこなかったのだ。派手に怪我をした。右ひざの皮がめくれ、赤い血がにじみ出ていた。
それでもUは懲りなかった。泣こうともせず、もう一度自転車に乗ろうとした。
父は止め、家に帰らされた。母は呆れ顔で消毒をしてくれた。
けれどUは懲りなかった。その日からも毎日毎日思い切り自転車を漕ぎ、公園を走った。今度は少し加減を付けて。
変に賢いUはブレーキに耐えられるスピードをきちんと計っていた。
今もUは懲りていない。公園だけでなく、遠く遠くを目指していつも馬鹿みたいにペダルを漕ぐ。賢く馬鹿みたいなサイクリングをする。
Uは明日も風を切って走るのだろう。
お久しぶりです『Uのこと』
大した意味は御座いません
伝聞経験書き綴る
ただの雑記に御座います
Uは近所の公園で自転車を乗り回していた。夢中な顔だ、それ以外のことに興味が全くないとでも言いたげな。
傍らには彼の父がいた。キャッチボールやサッカー、そしてこの自転車。Uは全て父から教わった。Uにとって父は師匠のような存在でもあった。
公園には広場の周りをぐるっと一周するようなコースがあり、Uはそのコースを何度も何度も回っていた。
途中、Uは父に「競争しよう」と提案した。父は少し渋ったのち首を縦に振る。Uは顔を輝かせ、「よーいドン!」と叫び地面を蹴った。
回る。回る。車輪が回る。
Uは自転車が好きだった。父が好きだった。秋の午後の涼しい澄んだ空気が好きだった。
何度か公園を回った末、Uは転んだ。ブレーキを掛けたときの反動に体がついてこなかったのだ。派手に怪我をした。右ひざの皮がめくれ、赤い血がにじみ出ていた。
それでもUは懲りなかった。泣こうともせず、もう一度自転車に乗ろうとした。
父は止め、家に帰らされた。母は呆れ顔で消毒をしてくれた。
けれどUは懲りなかった。その日からも毎日毎日思い切り自転車を漕ぎ、公園を走った。今度は少し加減を付けて。
変に賢いUはブレーキに耐えられるスピードをきちんと計っていた。
今もUは懲りていない。公園だけでなく、遠く遠くを目指していつも馬鹿みたいにペダルを漕ぐ。賢く馬鹿みたいなサイクリングをする。
Uは明日も風を切って走るのだろう。
お久しぶりです『Uのこと』
大した意味は御座いません
伝聞経験書き綴る
ただの雑記に御座います
2012年9月2日 22時35分36秒 (Sun)
懐かしい人
あなたは今どこにいますか 元気でいるでしょうか
九月、Uは思い出す。彼がかつて憧れた人のことを。
その人は明るく元気な人だった。クラスの中心というわけではないが、良くしゃべり、前に出ていく。
けど、くじ運がないというのかな。それとも間が悪い?
その人は努力する人だった。好きな事に一生懸命にな人だった。Uはその人のことを尊敬していたのさ。Uには当時、夢も目標もなかった。ただ、このコミュニティから離れたいと思うばかりだったからね。
音楽会でその人はピアノを弾くことになった。音楽祭の一ヶ月くらい前だったかな。その人の鞄は朝早くから教室の机の上においてあったんだってさ。
けど、その人の姿は見えない。どうしたんだろう、とUは「思わなかった」。実はUは随分と勘が働く子でね、その人がいない理由が何となくわかった。
Uは階段を上って、音楽室に向かって言った。はたして、そこからは聞こえてきたんだ。その人が演奏することになっている曲がね。
Uはすごく勇気が湧いた。なんたって自分たちの伴奏はこんなに偉い人なんだ、とね。
ほどなくして、今度はUが指揮を務めることになったんだとさ。ああ、勘違いしないでほしいんだが、その人のとは別の曲だよ。クラスで歌う歌と学年で歌う歌の、Uが指揮することになったのは学年の方さ。
Uは立候補したわけじゃないんだ。そもそも彼は前に出るのを嫌う方で、どちらかと言えば歌う方が好きだったんでね。
でもさ、わかるだろう?子供の頃なんて、音楽祭に真剣になる奴なんて数えるほどさ。指揮者を決める先生だって、真剣にやってて、かつそれなりに音を聞ける奴を選びたいってわけでね。
そんなわけでUが選ばれちまったのはある意味必然なんだね。しかしまあ、Uはそういうことには慣れっこだった。「そういう役目」ってある程度決まってて、Uは役目を押し付けられやすいタイプでね。
うん?その人のことから離れっちまってるって?ああ、あとちょっとだけ聞いてくれないかい。このよくある話ももう終わるからさ。
なんだかんだで、Uはその役目を立派に果たそうとしたのさ。そう言う奴なら分かると思うんだが、押し付けられた役目ってのはしっかりやる方が楽なんでね。技術の話じゃなくて、つまり周囲からの視線とかまあそこら辺の話だけど。
それで前日になってね、Uはその人の真似をして音楽室を借りに行ったんだ。
その日はU一人だった。CD音源を使って、指揮の練習を、そう30分ぐらいしてたのかな。
それを終えて鍵を返してって時にね、友人の一人に見つかって、Uは何をしてたのか言う羽目になったんだ。そしたらそいつがこともあろうにバラしちゃったんだな、その日のクラス練習で。
当然、Uは称賛されちまうんだ。お前は頑張り屋だな、ってね。
でもUは知ってるんだ。自分の10倍は努力してたであろう人のこと。自分の尊敬する人のことをね。
Uはつらかったんだとさ。その人の努力をその人の友人たちが知っていることを望んでやまなかった。
だって、努力してる人が報われないって、それでちょっと真似しただけの奴が褒められるって全然よくないだろ?
自分だけが知っていると思いたかったような、その人が自分よりも称賛されてほしいようなUには良くわからなかった。しかもUがその人のことを好きだってことはクラスの、まあ半分ぐらいかな。それ位には知れ渡っちまっててね。Uはどうしたらいいかわからなかったらしい。
その人は他のことでも結構そういう役回りだったとUは見てる。そん時なんにもできなかった自分がひどく情けないとも言っていたよ。
ああ、その人はどうしてるんだろうね。出来ることなら僕も会ってみたいなあ。
いや、どうだろう。Uの思い出の中の綺麗な姿だけを知っていればいいのかなあ。
やっぱり僕にもわからないね。果たしてUはどう思ってるのかな?
やまも落ちも御座いません
『Uのこと』にございます
それではそれでは
九月、Uは思い出す。彼がかつて憧れた人のことを。
その人は明るく元気な人だった。クラスの中心というわけではないが、良くしゃべり、前に出ていく。
けど、くじ運がないというのかな。それとも間が悪い?
その人は努力する人だった。好きな事に一生懸命にな人だった。Uはその人のことを尊敬していたのさ。Uには当時、夢も目標もなかった。ただ、このコミュニティから離れたいと思うばかりだったからね。
音楽会でその人はピアノを弾くことになった。音楽祭の一ヶ月くらい前だったかな。その人の鞄は朝早くから教室の机の上においてあったんだってさ。
けど、その人の姿は見えない。どうしたんだろう、とUは「思わなかった」。実はUは随分と勘が働く子でね、その人がいない理由が何となくわかった。
Uは階段を上って、音楽室に向かって言った。はたして、そこからは聞こえてきたんだ。その人が演奏することになっている曲がね。
Uはすごく勇気が湧いた。なんたって自分たちの伴奏はこんなに偉い人なんだ、とね。
ほどなくして、今度はUが指揮を務めることになったんだとさ。ああ、勘違いしないでほしいんだが、その人のとは別の曲だよ。クラスで歌う歌と学年で歌う歌の、Uが指揮することになったのは学年の方さ。
Uは立候補したわけじゃないんだ。そもそも彼は前に出るのを嫌う方で、どちらかと言えば歌う方が好きだったんでね。
でもさ、わかるだろう?子供の頃なんて、音楽祭に真剣になる奴なんて数えるほどさ。指揮者を決める先生だって、真剣にやってて、かつそれなりに音を聞ける奴を選びたいってわけでね。
そんなわけでUが選ばれちまったのはある意味必然なんだね。しかしまあ、Uはそういうことには慣れっこだった。「そういう役目」ってある程度決まってて、Uは役目を押し付けられやすいタイプでね。
うん?その人のことから離れっちまってるって?ああ、あとちょっとだけ聞いてくれないかい。このよくある話ももう終わるからさ。
なんだかんだで、Uはその役目を立派に果たそうとしたのさ。そう言う奴なら分かると思うんだが、押し付けられた役目ってのはしっかりやる方が楽なんでね。技術の話じゃなくて、つまり周囲からの視線とかまあそこら辺の話だけど。
それで前日になってね、Uはその人の真似をして音楽室を借りに行ったんだ。
その日はU一人だった。CD音源を使って、指揮の練習を、そう30分ぐらいしてたのかな。
それを終えて鍵を返してって時にね、友人の一人に見つかって、Uは何をしてたのか言う羽目になったんだ。そしたらそいつがこともあろうにバラしちゃったんだな、その日のクラス練習で。
当然、Uは称賛されちまうんだ。お前は頑張り屋だな、ってね。
でもUは知ってるんだ。自分の10倍は努力してたであろう人のこと。自分の尊敬する人のことをね。
Uはつらかったんだとさ。その人の努力をその人の友人たちが知っていることを望んでやまなかった。
だって、努力してる人が報われないって、それでちょっと真似しただけの奴が褒められるって全然よくないだろ?
自分だけが知っていると思いたかったような、その人が自分よりも称賛されてほしいようなUには良くわからなかった。しかもUがその人のことを好きだってことはクラスの、まあ半分ぐらいかな。それ位には知れ渡っちまっててね。Uはどうしたらいいかわからなかったらしい。
その人は他のことでも結構そういう役回りだったとUは見てる。そん時なんにもできなかった自分がひどく情けないとも言っていたよ。
ああ、その人はどうしてるんだろうね。出来ることなら僕も会ってみたいなあ。
いや、どうだろう。Uの思い出の中の綺麗な姿だけを知っていればいいのかなあ。
やっぱり僕にもわからないね。果たしてUはどう思ってるのかな?
やまも落ちも御座いません
『Uのこと』にございます
それではそれでは
2012年8月31日 20時57分01秒 (Fri)
アサガオ
夏のこと。一人暮らし先から帰省していたUはアサガオの水やりをたのまれていた。
アサガオの栽培はUの母親が始めたことだそうだ。彼女曰く、
「緑のカーテンをつくりたいの」
とのこと。
特にやることもなく時間を持て余していたUは何とはなしに引き受けた。
毎朝の六時半。サンダルを履き庭に出る。Uの家は動き出すのが早く、ベランダでは父が洗濯物を干していた。
バケツに水を汲み、プランターに運ぶ。これを繰り返す。
Uの家では外の蛇口のアタッチメントがズレていて、今はホースが使えない。バケツを使うのは応急措置だ。本当ならホースを使ってさっさと水を撒ける。
しかし、この単調な作業をUはそれなりに気に入ったらしい。面倒くさそうにはみえず、鼻歌すら歌っている。
「おっ」
鼻歌が止まる。Uは視線を少し上にあげていた。
「また一輪咲いたじゃん」
Uは
「花がなかなか咲かない」
という母の愚痴を思いだしながら、ニヤッと歯をのぞかせる。
「また向こうに行くまでには、あと二、三は咲くだろうさ」
かんらかんらと口を開け。Uは家へと戻っていった。
やまもおちもありませぬ。
「Uのこと」に御座います。
それではそれでは
アサガオの栽培はUの母親が始めたことだそうだ。彼女曰く、
「緑のカーテンをつくりたいの」
とのこと。
特にやることもなく時間を持て余していたUは何とはなしに引き受けた。
毎朝の六時半。サンダルを履き庭に出る。Uの家は動き出すのが早く、ベランダでは父が洗濯物を干していた。
バケツに水を汲み、プランターに運ぶ。これを繰り返す。
Uの家では外の蛇口のアタッチメントがズレていて、今はホースが使えない。バケツを使うのは応急措置だ。本当ならホースを使ってさっさと水を撒ける。
しかし、この単調な作業をUはそれなりに気に入ったらしい。面倒くさそうにはみえず、鼻歌すら歌っている。
「おっ」
鼻歌が止まる。Uは視線を少し上にあげていた。
「また一輪咲いたじゃん」
Uは
「花がなかなか咲かない」
という母の愚痴を思いだしながら、ニヤッと歯をのぞかせる。
「また向こうに行くまでには、あと二、三は咲くだろうさ」
かんらかんらと口を開け。Uは家へと戻っていった。
やまもおちもありませぬ。
「Uのこと」に御座います。
それではそれでは
プロフィール
- 発光体
- なんかプラズマって炎とかを物質の状態としてあらわした言葉らしいです
- 自己紹介
- 某所から巡り巡ってここに流れてきました。遅筆、駄文ですがどうぞよろしく
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