小説
愛 タッチ YOU
黄x黒 黒子のバスケ
1. 君と青と羊
SUPER COMIC CITYに出品する予定の本の冒頭です
黒子と書いて『くろこ』と読む。『ほくろ』とは読まない。
黒子テツヤはオレの教育係だった。
中学時代、バスケ部に入部した頃の話だ。
「僕が君の教育係りの黒子テツヤです」
小さな教育係だった。当時ですらオレは180センチ近く身長があったので、自然、黒子を見下ろすことになった。
黒子は同学年だったが、小柄で華奢で筋肉とは無縁の体つきをしていた
。まん丸い大きな目と、ぴょこんとてっぺんの髪が寝ぐせのように立っていた。
頭のてっぺんにつむじがあるせいだ。
(ショボい。こいつにバスケなんてできるのか?)
バスケなんてしてるヤツは多かれ少なかれ、ワイルドなオーラを発してるものなんだけど、黒子にはまったくそれがない。
野性的といっても、草食動物。のほほんと草を食んでる羊みたいで、なんだか影すら薄かった。
影が薄い――それこそが黒子なんだ、と今はわかっているけれど。
学年の途中でバスケ部に入部し、しかもバスケは初心者だったからつけられた教育係りだが、黒子という人選には正直不満だった。
(こんなやつがオレの教育係かよ)
オレはそれまでどんなスポーツでも人に負けたことはないのだ。
バスケだってやればすぐにできる。教育係りなんて必要ないとも思っていた。
オレの見下すような不遜な態度に、黒子は気づいていただろうが、少しも態度には見せなかった。ただ、大きな目でじっとオレを見て、真面目な顔で言ったものだ。
「黄瀬君は外国人ですか?」
「なんで?」
確かに髪は金髪に染めてるし、瞳は少し色素が薄い明かるい茶色だ。
でも、外人に間違えられたことはない。髪を染めてるってことくらい、見りゃ分かるだろう。
オレが否定すると、「そうなんですか」と黒子は言った。
「まつ毛があんまりにも長いから日本人ではないのかと」
……ポイントは、まつ毛だったのか。
ヘンなヤツ、そう思った。
その時は、まさかそのヘンなヤツをこれほど好きになるとは夢にも思わなかったんだ。
スポーツでは誰にもどんなやつにも負けたことがない。
ただひとりだけ、オレがどんなにがんばっても、絶対に敵わないヤツがひとりだけいる。
―青峰大輝、帝光中のエース。
青峰と出会わなかったら、オレはバスケをしていなかっただろう。
あの頃のオレは、つまんない日々を送っていた。
声をかけられて始めたモデルのバイト。モデルをしてるってだけで寄って来る女の子たちがいても、ただそれだけだった。
スポーツだってそうだ。自慢してるって言われるだろうけど、オレは身体能力が異常に高いらしいのだ。
おかげで、走れば陸上部のエースを抜き、サッカーをやれば小さな頃からボールを蹴っていた奴らを抜いてしまう。
何をやってもそうだ。オレに張り合える奴はいなかった。
バスケ部の青峰大輝以外は。
だから、オレはバスケ部に入ったのだ。
出会ったころの青峰はバスケ馬鹿だった。
バスケが好きで好きで、ディフェンスをかわして得点することを心から楽しんでいた。よく笑ってもいた。
―今の青峰からは考えられないが。
青峰は一年生の頃からもちろんレギュラーで、驚いたことに黒子は、なんとレギュラーだった。
さらに驚いたことに、二人は仲がよかった。
性格も見かけもまったく異質な二人なのに、青峰と黒子はなぜかいつも一緒にいた。
青峰は、黒子のことを『テツ』と呼んでいた。
一方、黒子は見かけどおりへぼかった。
バスもシュートもドリブルも、オレはあっという間に教育係りの黒子を抜かした。
そもそも黒子は運動神経というものを持っていなかった。
足も遅いし、シュートは至近距離でなければ、リングまで届かないし、そもそもリング下のシュートだって入らなかった。
実力でいえば、3軍の中でも一番下だろう。
それなのに驚いたことに、黒子はレギュラーなのだ。
なぜ黒子がレギュラーなのか、納得がいかないオレは青峰に聞いたものだ。
「テツか…、あいつは特殊だからな」
青峰はそう言った。
黒子が特殊、と言うわけはやがてわかった。
たしかに黒子は特殊だった。
コートでは姿を現してはいけない幻のような存在だった。
彼の役割はパスの中継点になることだ。
黒子から出るパスの出所を敵は決して知ることができない。
なぜかというと、黒子はミスディレクションという相手の視線を誘導するフェイントを使うのだ。
だから、パスの瞬間、敵は黒子を見失う。
もっとも敵どころか、味方すら、黒子に惑わされてしまうことが多いので、目の前にいきなりワープしたようにボールが現れて、とまどうことが多々あった。
青峰だけ別だった。青峰は黒子がボールを送るタイミングがわかっていたし、黒子も、青峰がどこでボールを欲しがるか、なぜかわかっていた。
青峰はあまりにもまぶしすぎる光で、黒子はその影帽子だ。光と影、二人は最強のコンビだった。
黒子はオレの教育係なので、部活中は一緒にいる時間が長かった。
黒子はオレが上手くなるたびに喜んでほめてくれたし、逆に自分勝手なプレーをすると注意された。
ある練習試合で言われたことを覚えている。
「チームのために、自分が何をできるか考えてください」
チームのために―中学のガキには難しい言葉だったと思う。でも、黒子はそういうヤツだった。
チームの勝利のために、黙々と自分のできることをやっていた。
誰よりも非力だけど、いざとなると誰より頼もしい。
オレの中で黒子の評価はどんどん上がっていき、黒子の存在が大きくなっていったんだ。
ところで、入部してから気づいたんだが、オレ達の中学はバスケットボールの名門校でもあった。
帝光中バスケットボール部は、ここ十年負けたことがない、らしい。
そして、そのレギュラー達はヘンな奴らばかりだった。
なぜか、より遠くからシュートを打つことばかりに固執する緑間。
スナック菓子ばかり食ってるガキみたいな紫原。
何を考えてるかさっぱり読めない司令塔役の赤司。
みんな個性的でバラバラで、でもチームとしてはちゃんと機能していた。
そして、ただ一つ帝光中で大切なのは、勝つことだった。大切と言うよりも必要最低限の条件だった。
呼吸をするのが当たり前のように、帝光中では、勝利はあまりにも当たり前でごく自然なことなのだった。
ある日、黒子はバスケ部をやめた。
なぜかはわからない。ただ、黒子はもうバスケをしないのだろう、とオレは思った。
なぜなら、黒子の力はあまりにも特殊で、他のチームでは機能しないだろう、黒子を生かしてやれるのは、帝光中のメンバーだけだと思っていたから。
もし、そのチームに青峰のようなヤツがいれば別だけど。
(残念だな)と思った。
オレだって、黒子を生かしてやれるのに。そう思うと、ホントに残念だった。
黒子は誰よりもバスケが大好きだったはずだ。
だから、バスケを続けてほしかったんだ。
黒子テツヤはオレの教育係だった。
中学時代、バスケ部に入部した頃の話だ。
「僕が君の教育係りの黒子テツヤです」
小さな教育係だった。当時ですらオレは180センチ近く身長があったので、自然、黒子を見下ろすことになった。
黒子は同学年だったが、小柄で華奢で筋肉とは無縁の体つきをしていた
。まん丸い大きな目と、ぴょこんとてっぺんの髪が寝ぐせのように立っていた。
頭のてっぺんにつむじがあるせいだ。
(ショボい。こいつにバスケなんてできるのか?)
バスケなんてしてるヤツは多かれ少なかれ、ワイルドなオーラを発してるものなんだけど、黒子にはまったくそれがない。
野性的といっても、草食動物。のほほんと草を食んでる羊みたいで、なんだか影すら薄かった。
影が薄い――それこそが黒子なんだ、と今はわかっているけれど。
学年の途中でバスケ部に入部し、しかもバスケは初心者だったからつけられた教育係りだが、黒子という人選には正直不満だった。
(こんなやつがオレの教育係かよ)
オレはそれまでどんなスポーツでも人に負けたことはないのだ。
バスケだってやればすぐにできる。教育係りなんて必要ないとも思っていた。
オレの見下すような不遜な態度に、黒子は気づいていただろうが、少しも態度には見せなかった。ただ、大きな目でじっとオレを見て、真面目な顔で言ったものだ。
「黄瀬君は外国人ですか?」
「なんで?」
確かに髪は金髪に染めてるし、瞳は少し色素が薄い明かるい茶色だ。
でも、外人に間違えられたことはない。髪を染めてるってことくらい、見りゃ分かるだろう。
オレが否定すると、「そうなんですか」と黒子は言った。
「まつ毛があんまりにも長いから日本人ではないのかと」
……ポイントは、まつ毛だったのか。
ヘンなヤツ、そう思った。
その時は、まさかそのヘンなヤツをこれほど好きになるとは夢にも思わなかったんだ。
スポーツでは誰にもどんなやつにも負けたことがない。
ただひとりだけ、オレがどんなにがんばっても、絶対に敵わないヤツがひとりだけいる。
―青峰大輝、帝光中のエース。
青峰と出会わなかったら、オレはバスケをしていなかっただろう。
あの頃のオレは、つまんない日々を送っていた。
声をかけられて始めたモデルのバイト。モデルをしてるってだけで寄って来る女の子たちがいても、ただそれだけだった。
スポーツだってそうだ。自慢してるって言われるだろうけど、オレは身体能力が異常に高いらしいのだ。
おかげで、走れば陸上部のエースを抜き、サッカーをやれば小さな頃からボールを蹴っていた奴らを抜いてしまう。
何をやってもそうだ。オレに張り合える奴はいなかった。
バスケ部の青峰大輝以外は。
だから、オレはバスケ部に入ったのだ。
出会ったころの青峰はバスケ馬鹿だった。
バスケが好きで好きで、ディフェンスをかわして得点することを心から楽しんでいた。よく笑ってもいた。
―今の青峰からは考えられないが。
青峰は一年生の頃からもちろんレギュラーで、驚いたことに黒子は、なんとレギュラーだった。
さらに驚いたことに、二人は仲がよかった。
性格も見かけもまったく異質な二人なのに、青峰と黒子はなぜかいつも一緒にいた。
青峰は、黒子のことを『テツ』と呼んでいた。
一方、黒子は見かけどおりへぼかった。
バスもシュートもドリブルも、オレはあっという間に教育係りの黒子を抜かした。
そもそも黒子は運動神経というものを持っていなかった。
足も遅いし、シュートは至近距離でなければ、リングまで届かないし、そもそもリング下のシュートだって入らなかった。
実力でいえば、3軍の中でも一番下だろう。
それなのに驚いたことに、黒子はレギュラーなのだ。
なぜ黒子がレギュラーなのか、納得がいかないオレは青峰に聞いたものだ。
「テツか…、あいつは特殊だからな」
青峰はそう言った。
黒子が特殊、と言うわけはやがてわかった。
たしかに黒子は特殊だった。
コートでは姿を現してはいけない幻のような存在だった。
彼の役割はパスの中継点になることだ。
黒子から出るパスの出所を敵は決して知ることができない。
なぜかというと、黒子はミスディレクションという相手の視線を誘導するフェイントを使うのだ。
だから、パスの瞬間、敵は黒子を見失う。
もっとも敵どころか、味方すら、黒子に惑わされてしまうことが多いので、目の前にいきなりワープしたようにボールが現れて、とまどうことが多々あった。
青峰だけ別だった。青峰は黒子がボールを送るタイミングがわかっていたし、黒子も、青峰がどこでボールを欲しがるか、なぜかわかっていた。
青峰はあまりにもまぶしすぎる光で、黒子はその影帽子だ。光と影、二人は最強のコンビだった。
黒子はオレの教育係なので、部活中は一緒にいる時間が長かった。
黒子はオレが上手くなるたびに喜んでほめてくれたし、逆に自分勝手なプレーをすると注意された。
ある練習試合で言われたことを覚えている。
「チームのために、自分が何をできるか考えてください」
チームのために―中学のガキには難しい言葉だったと思う。でも、黒子はそういうヤツだった。
チームの勝利のために、黙々と自分のできることをやっていた。
誰よりも非力だけど、いざとなると誰より頼もしい。
オレの中で黒子の評価はどんどん上がっていき、黒子の存在が大きくなっていったんだ。
ところで、入部してから気づいたんだが、オレ達の中学はバスケットボールの名門校でもあった。
帝光中バスケットボール部は、ここ十年負けたことがない、らしい。
そして、そのレギュラー達はヘンな奴らばかりだった。
なぜか、より遠くからシュートを打つことばかりに固執する緑間。
スナック菓子ばかり食ってるガキみたいな紫原。
何を考えてるかさっぱり読めない司令塔役の赤司。
みんな個性的でバラバラで、でもチームとしてはちゃんと機能していた。
そして、ただ一つ帝光中で大切なのは、勝つことだった。大切と言うよりも必要最低限の条件だった。
呼吸をするのが当たり前のように、帝光中では、勝利はあまりにも当たり前でごく自然なことなのだった。
ある日、黒子はバスケ部をやめた。
なぜかはわからない。ただ、黒子はもうバスケをしないのだろう、とオレは思った。
なぜなら、黒子の力はあまりにも特殊で、他のチームでは機能しないだろう、黒子を生かしてやれるのは、帝光中のメンバーだけだと思っていたから。
もし、そのチームに青峰のようなヤツがいれば別だけど。
(残念だな)と思った。
オレだって、黒子を生かしてやれるのに。そう思うと、ホントに残念だった。
黒子は誰よりもバスケが大好きだったはずだ。
だから、バスケを続けてほしかったんだ。
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プロフィール

- ニックネーム
- うり
- 性別
- 腐女子
- 血液型
- B型
- 自己紹介
- 本が大好きな主婦です。黒子のバスケなんかの二次小説を書いています。
- 趣味
- 犬と遊ぶこと。映画を観ること。音楽を聴くこと。走ること、と言いたいが、最近走れない…
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- 人事を尽くして神様にお願いする
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