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小説

愛 タッチ YOU
黄 X 黒 黒子のバスケ

5.絶対に勝ってやろうと思うのに必要なもの 2

十分間のハーフタイム。第2ピリオドまでは
(このままじゃヤバイな)
あとちょっと、あとちょっとで青峰を捉えられそうだが、
点差は縮まらない。このままでは、ジリジリと点差を広げられて、タイムアウトだ。
「ちょっと出てくるっス」
頭を冷やすために、外の空気を吸うことにした。
体育館の西口の階段を2階へ上ると外への出入り口があった。誰も出入りしなそうな埃のかぶったドアノブを回して扉を押すと、風が入り込んできた。
そこは手すりのついたバルコニーのようになっていて、外部からは入れない。座ってしまえば、外からも中からも誰にも見られることはない。
一人になるにはうってつけの場所だった。
中学時代、オレ達はよくこんな場所を見つけたものだ。週末はたいてい遠征や試合があったので、なんとなく体育館施設の造りはわかっていた。
そして、こんなふうな誰も来ない穴場を見つけては、先生の目を盗んで、駄菓子をつまんだり、たわいのない話をしたりしてさぼっていたものだ。

 バルコニーから外をのぞくと、体育館の外には人通りが少なかった。真夏の午後、日差しは強い。
ありがたいことに、ここは日陰になっていた。大きな木があって、繁った葉が強い日差しを遮っていたからだ。
室内の競技場からは、ボールの跳ねる音と、選手たちのバッシュの音、それから声援が聞こえてきた。
「しんどいなぁ」
思わず、ため息をついた。
「黄瀬君」
突然、背後から声がした。
「これどうぞ」という声と同時に、冷たいものがピタっと首筋にあたり、オレは思わずとび上がった。
「うぉ」
ペットボトルを持った黒子が後ろに立っていたのだ。
「飲みますか?飲みかけですけど」
「黒子っち…なんで?」
「黄瀬君がここに入るの見えたんです」
「…来てたんスか。合宿は?」
「合宿は今朝終わって、近くだったので、そのままここに試合を観に来ました」
黒子は、ぱんぱんに膨らんだスポーツバッグを肩から下げていた。合宿の荷物を持ったまま来たんだろう。
「そうだったんだ。試合見てた?」
「はい」黒子は頷いた。
合宿は海だったのか山だったのか、黒子は少し日焼けしてた。寝ぐせみたいな髪は相変わらずだ。
「ねぇ、黒子っち」
冷たい手すりの上に寄りかかると気持ちよかった。
そのまま、顔だけ黒子に向けた。
「正直言って…どっちが勝つと思うっスか?」
軽く冗談めかして聞いたつもりだった。
一瞬黒子は丸い目をもっと丸くした。何か言葉を探すふうだったけど、やがて首を振った。
「わかりません」
黒子らしい、と思った。でも、オレは拗ねてみせた。
「そこは『黄瀬君です』って言ってほしいとこっスよ」
「どっちが勝つかホントにわからないんです」
黒子は眉を下げて、すまなそうに黄瀬を見た。
なんて正直なヤツなんだ。でも、オレもうわべだけの慰めが欲しいわけではなかった。
「フーン?どっちが勝つかわからない、か・・・」
空を見上げると、夏の空に、もくもくとした雲が遠い山の上に湧いている。
「…強いっスよ。青峰っちは…」
オレはぼそっと口にした。
「はい。強いです」
「中学までは味方だったから、ホントの強さがわかんなかった。試合で対戦して、初めてわかったっス…ありゃ、モンスターっスよ」
黒子は黙っていた。青峰の強さを一番わかってるのは黒子かもしれない。
「ねぇ…黒子っち、オレを応援してくれる?」
オレは情けない声を出していただろう。
「…それとも、あっちの応援する?」
黒子は「えっ」という顔をして、それから、ちょっと傷ついたような困ったような表情をしていたが、やがてきっぱりと言った。
「どっちも…」
「どっちも?」
「応援はしません。だって、どっちもライバルですから。
黄瀬君も青峰君もどちらも僕のライバルです。二人とも僕たちがウィンターカップで倒します」
黒子の大きな瞳に揺ぎない決心が宿っていた。
「ライバル…かぁ」
不思議と吹っ切れた感があった。
「だよね」
「です」
黒子とオレは顔を見合わせて笑った。
オレは言った。
「勝てる、ってわかってる試合より、勝てるかどうかわからない今の方が百倍は楽しいっスよ」
黒子は黙ってオレの言葉を聞いていた。
やがて、競技場の中からピーとブザーの音が響いてきた。後半開始3分前の合図だ。
「後半始まりますね」
「じゃ、行くっスわ」
「はい」黒子が頷いた。
すれ違いざま、オレは黒子のピンと立った寝グセを指でひっぱった。「黄瀬君、痛いです」
「黄瀬君」呼び止められた。
振り返ると、黒子がペットボトルを投げてよこした。
「飲みかけですけど、よかったら」
中身が半分ほどに減っているペットボトルは、チャプンと音を立てて、手の中に落ちた。

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プロフィール

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ニックネーム
うり
性別
腐女子
血液型
B型
自己紹介
本が大好きな主婦です。黒子のバスケなんかの二次小説を書いています。
趣味
犬と遊ぶこと。映画を観ること。音楽を聴くこと。走ること、と言いたいが、最近走れない…
特技
動物には好かれる方
職業
事務職
座右の銘
人事を尽くして神様にお願いする

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