小説
愛 タッチ YOU
黄 X 黒 黒子のバスケ
6.そりゃ君が好きだから
だれだろう?『がんばれば夢が叶う』と言ったのは。
『あきらめなければ絶対勝てる』?無責任なことを言うのはやめてもらいたい。
オレは頑張ったし、最後まであきらめなかった。
……それでも負けた。またオレは青峰に負けた。
青峰を追い詰めたのは確かだ。第4ピリオド、青峰は4つファウルを背負っていたんだから。
あと一つで退場。普通なら、満足にディフェンスができないはずだ。片羽根をもがれたも同然で、でも青峰は平然と笑っていた。
「やるじゃねぇか、黄瀬」
心底楽しそうに青峰は笑ったのだ。
「青峰っち、5ファウル怖くないっスか?」
「ハッ、誰にもの言ってんだ?」
「あと一つで退場っスよ」
「バーカ、だから面白いんだろーが」
この状態で面白い?
あの時、わかった。青峰はまだまだ底を見せてはいないんだと。
青峰に追いついたつもりでいたオレは愕然とした。
一方、オレの方はもう限界を超えていた。
タオルで拭いても拭いても大量の汗が流れ落ち、脚はつりそうだった。
先輩たちはオレを信じてくれた。信じて最後まで勝負を任せてくれた。それでも、勝てなかった。
青峰はオレに言葉もかけず、振り向きもせずに去って行った。
オレは惨めさに打ちのめされていた。惨めすぎて泣くこともできない。
先輩はもちろん誰もオレを責めたりしなかった。けど、申し訳なくて、チームの中にはいられなかった。
早く一人になりたくて、解散後ここに駆けこんだ。
ハーフタイムで見つけた、西口階段上のバルコニー。
ここならだれも来ない。
バルコニーの中に膝を抱えて座り込んでいた。
中の競技場から聞こえるのは、バッシュのキュッキュと鳴る音。今日の試合が全部終わり、フロアにモップをかけているんだろう。
熱い夏の日も終わりに近く、西日がバルコニーに射し込んでいる。
一日が終わろうとしているのに、オレは体力も気力ももう限界で、どこにも行けそうにない。
「黄瀬君」
声がした。ここを知っているのは…
「黒子っち…」
「やっぱりここでしたか」
黒子はするりとオレの横に腰かけた。
「なんで、ここに…」
「海常の皆さんに会いましたけど、黄瀬君はいなかったので」
オレが口を開こうとしないので、黒子は一人でしゃべっていた。
「ここ、いい場所ですね。誰も来ないし」
会いたくなかった。
たぶん、今一番会いたくない相手だった。
試合に勝って告白する―なんて決心をしていたのに、負けた直後に本人に会わなきゃいけないなんて、人生ってなんて残酷なんだ。
黒子はオレの気持ちに気づいてもいないだろう。
『勝ってた頃より、勝てるかわからない今の方が楽しい』
偉そうに、彼にそう言ったことが恥ずかしく思えた。
オレの中でどす黒い塊のようなものがが湧き上がってきていた。能天気に隣に座っている黒子に苛立った。
「黒子っち、なんでここにいるんスか?」
言葉を口にすると、すべてトゲトゲしい口調になる。
「あっちに行った方がいいんじゃないっスか?」
オレは下を向いたまま言った。
「あっちって、どこですか?」
咽喉に棘が刺さったようで声が出てこない。唾を飲み込んで、なんとか低い声を絞り出した。
「……青峰んとこ」
「青峰君のところへ?なぜですか?」
「そりゃ……準決勝って、おめでとうっていうだろ、ふつう」
「青峰君は、『おめでとう』なんて言われても喜ばないと思います。それに青峰君は…」
「だからって…」
だからってオレのところに来ないで欲しかった。
黒子の同情なんか欲しくない。恋焦がれた相手にこれ以上みっともないところを見せなくない。
「もう、行ってくれないかな」
「なぜですか?ここにいてはダメですか?」
「オレは一人になりたいんだよ」
「では、僕は何もしゃべりませんから、ここにいさせてください」
黒子が食い下がってきた。なんでだろう?今日に限って黒子は強情だった。
「もういい。オレが行くから」
オレは立ち上がった。少なくとも立ち上がろうとした。
だが、持てる力のすべてを青峰との対決に注いだおかげで、体力の消耗が激しく、立ちあがって体を支える力さえ残っていないのだった。
ふらついて、下のコンクリートに両手をついた。
「痛ってぇ」
ああ、オレ、なんてカッコ悪い。なんで好きな相手にここまで無様なところを見せなきゃいけないんだ。
そう思ったら、猛烈に腹がたった。
誰に?もちろん、自分にだ。
だが、恐ろしいことに、オレは怒りの矛先を向けたのは自分にではなかった。
カッとなって人を殺す、という心理状態が今ならわかる。人は思ったよりも、危ういバランスで正気を保っているのかもしれない。
この時のオレは正気じゃなかった。頭がカーと熱くなって、自分を失った。魔がさす、というのはこういうことなんだと思う。
『あきらめなければ絶対勝てる』?無責任なことを言うのはやめてもらいたい。
オレは頑張ったし、最後まであきらめなかった。
……それでも負けた。またオレは青峰に負けた。
青峰を追い詰めたのは確かだ。第4ピリオド、青峰は4つファウルを背負っていたんだから。
あと一つで退場。普通なら、満足にディフェンスができないはずだ。片羽根をもがれたも同然で、でも青峰は平然と笑っていた。
「やるじゃねぇか、黄瀬」
心底楽しそうに青峰は笑ったのだ。
「青峰っち、5ファウル怖くないっスか?」
「ハッ、誰にもの言ってんだ?」
「あと一つで退場っスよ」
「バーカ、だから面白いんだろーが」
この状態で面白い?
あの時、わかった。青峰はまだまだ底を見せてはいないんだと。
青峰に追いついたつもりでいたオレは愕然とした。
一方、オレの方はもう限界を超えていた。
タオルで拭いても拭いても大量の汗が流れ落ち、脚はつりそうだった。
先輩たちはオレを信じてくれた。信じて最後まで勝負を任せてくれた。それでも、勝てなかった。
青峰はオレに言葉もかけず、振り向きもせずに去って行った。
オレは惨めさに打ちのめされていた。惨めすぎて泣くこともできない。
先輩はもちろん誰もオレを責めたりしなかった。けど、申し訳なくて、チームの中にはいられなかった。
早く一人になりたくて、解散後ここに駆けこんだ。
ハーフタイムで見つけた、西口階段上のバルコニー。
ここならだれも来ない。
バルコニーの中に膝を抱えて座り込んでいた。
中の競技場から聞こえるのは、バッシュのキュッキュと鳴る音。今日の試合が全部終わり、フロアにモップをかけているんだろう。
熱い夏の日も終わりに近く、西日がバルコニーに射し込んでいる。
一日が終わろうとしているのに、オレは体力も気力ももう限界で、どこにも行けそうにない。
「黄瀬君」
声がした。ここを知っているのは…
「黒子っち…」
「やっぱりここでしたか」
黒子はするりとオレの横に腰かけた。
「なんで、ここに…」
「海常の皆さんに会いましたけど、黄瀬君はいなかったので」
オレが口を開こうとしないので、黒子は一人でしゃべっていた。
「ここ、いい場所ですね。誰も来ないし」
会いたくなかった。
たぶん、今一番会いたくない相手だった。
試合に勝って告白する―なんて決心をしていたのに、負けた直後に本人に会わなきゃいけないなんて、人生ってなんて残酷なんだ。
黒子はオレの気持ちに気づいてもいないだろう。
『勝ってた頃より、勝てるかわからない今の方が楽しい』
偉そうに、彼にそう言ったことが恥ずかしく思えた。
オレの中でどす黒い塊のようなものがが湧き上がってきていた。能天気に隣に座っている黒子に苛立った。
「黒子っち、なんでここにいるんスか?」
言葉を口にすると、すべてトゲトゲしい口調になる。
「あっちに行った方がいいんじゃないっスか?」
オレは下を向いたまま言った。
「あっちって、どこですか?」
咽喉に棘が刺さったようで声が出てこない。唾を飲み込んで、なんとか低い声を絞り出した。
「……青峰んとこ」
「青峰君のところへ?なぜですか?」
「そりゃ……準決勝って、おめでとうっていうだろ、ふつう」
「青峰君は、『おめでとう』なんて言われても喜ばないと思います。それに青峰君は…」
「だからって…」
だからってオレのところに来ないで欲しかった。
黒子の同情なんか欲しくない。恋焦がれた相手にこれ以上みっともないところを見せなくない。
「もう、行ってくれないかな」
「なぜですか?ここにいてはダメですか?」
「オレは一人になりたいんだよ」
「では、僕は何もしゃべりませんから、ここにいさせてください」
黒子が食い下がってきた。なんでだろう?今日に限って黒子は強情だった。
「もういい。オレが行くから」
オレは立ち上がった。少なくとも立ち上がろうとした。
だが、持てる力のすべてを青峰との対決に注いだおかげで、体力の消耗が激しく、立ちあがって体を支える力さえ残っていないのだった。
ふらついて、下のコンクリートに両手をついた。
「痛ってぇ」
ああ、オレ、なんてカッコ悪い。なんで好きな相手にここまで無様なところを見せなきゃいけないんだ。
そう思ったら、猛烈に腹がたった。
誰に?もちろん、自分にだ。
だが、恐ろしいことに、オレは怒りの矛先を向けたのは自分にではなかった。
カッとなって人を殺す、という心理状態が今ならわかる。人は思ったよりも、危ういバランスで正気を保っているのかもしれない。
この時のオレは正気じゃなかった。頭がカーと熱くなって、自分を失った。魔がさす、というのはこういうことなんだと思う。
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プロフィール

- ニックネーム
- うり
- 性別
- 腐女子
- 血液型
- B型
- 自己紹介
- 本が大好きな主婦です。黒子のバスケなんかの二次小説を書いています。
- 趣味
- 犬と遊ぶこと。映画を観ること。音楽を聴くこと。走ること、と言いたいが、最近走れない…
- 特技
- 動物には好かれる方
- 職業
- 事務職
- 座右の銘
- 人事を尽くして神様にお願いする
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