小説
冬が来る
ランランラン RUN RUN RUN 3 黒子のバスケ
W.C.前 温泉にて。青X黒かなぁ?腐注意です。
(誰だろう?)
冷たく濡れた黒子の髪を誰かが触っている。
誰かが髪をそっとひっぱったり、絡ませたり
頭を撫でる優しいタッチがとても気持ちいい
いつか誰かにこんなふうに撫でられたことがある
とても安心できて信頼できる優しいタッチ
(覚えている、僕は覚えている)
そっと触れる、額から頬へ、頬から首筋に。
指先がからかうように、くるくると黒子の肌に円を描いた
そして胸元にしのんでくると、冷たい風を肌に感じて・・・
「冷たっ」
ヒヤッとした冷たいものが首筋にあたる。
その冷たさに黒子は覚醒した。
「いつまでも寝てんなよ。
あんまり起きねぇから、もっといたずらしちゃうとこだったぞ」
覚醒した黒子の目に飛び込んできたのは、よく知ってる、偉そうな顔だった。
「青峰君」
青峰大輝がそこに立っていた。桐皇のジャージ姿だ。
「ホラよ」
青峰は青いボトルに入れたポカリを黒子に寄こした。
首筋を触った冷たいものはこれか。
「飲めよ。どうせ風呂でのぼせたんだろ」
「ありがとうございます」
まだ少しくらくらしたが、なんとか起き上がった。
黒子は温泉に入ってのぼせてしまい、
火神にこのベンチに寝かせてもらったのだ。
火神は確か自販機でポカリが売り切れだったので、
どこかに買いにいったはずだ。
青い専用ボトルに入ったこのポカリは青峰が飲んでいたものだろう。
青峰のくれたポカリを一口飲んだ。
甘い飲料水がスーと体に沁みわたっていく。
黒子が白い咽喉をこくこくさせて飲むのを青峰はじっと見ていた。
「久しぶりだな、テツ」
黒子は口もとを手の甲でぬぐうと、青峰を見た。
「青峰君、なぜここにいるんですか?」
黒子の所属する誠凛高校のバスケ部は
ウィンター・カップ前のリフレッシュのため、この温泉に来ていた。
何でも監督の知り合いの経営する温泉だから、格安で泊まれたらしい。
「さあ、知らねぇ。俺はただ練習試合の後に、ここに連れて来られただけだ」
「桐皇は練習試合の後、この温泉に入りに来たんですか?」
「みてーだな。俺はバスの中で寝てたらここに連れて来られた。
他のやつらは温泉に入りにいったけど」
「青峰君はお風呂に入らないんですか?」
「だりぃからパス」
青峰は肩をすくめた。
「したら、テツ、お前がこんなとこでマグロみてぇに転がってたんで
びっくりしたぜ」
「僕も目が覚めたら青峰君がいたのでびっくりです。
でも、桐皇后は偶然僕らのいる温泉に来たんですか?」
「まぁ、まったくの偶然じゃないだろーな」
ガチャンと音がして、自販機の底に青峰の買った炭酸入りのジュースが落ちる。
青峰は昔から炭酸系のジュースが好きだ。
相変わらず飲み物には頓着しない。
アスリートはふつう炭酸入りの甘いジュースは飲まないのではないか。
「しかし、相変わらず細っこいな、テツ」
青峰はゴクゴクと咽喉を鳴らしてジュースを飲むと、
横目で黒子の首筋のあたりに目をやる。
黒子は自分の浴衣の襟元がはだけ、
自分の貧弱な体が露出しているのに気づくと、ばっと左右の襟をかき集めた。
確か、のぼせた自分にこの浴衣を着せてくれたのは火神だったはずだ。
「高校に入って少しはがっちりしてきたかと思ったんだけどな」
「これでも少しは筋肉つきました」
青峰は眉を上げた。
「へぇ、それで?」
残念ながら、黒子の体には筋肉がつきにくいようだ。
火神なんかは同じトレーニングしていても、筋肉が着実についていた。
肩や胸に筋肉量が増えているは目に見えてわかる。
青峰もそうだ。それほど練習しているようには思えないが、
きれいな筋肉が骨格を覆っている。
引き締まったアスリートの体というやつだ。
火神も青峰も、二人とも神様から授かった天性の身体を持っている。
黒子はため息をついた。これだけは不公平だと思う。
だが比べてもしようがない。黒子なりには成長してる。
筋肉だって多少はついて、体も少しはがっちりしてきたはずだ。
中学時代に比べれば。
「でも、まだまだ足りねーな。
そんなんじゃ、試合中押し倒されんじゃねぇのか?
胸なんかぺったんこじゃん、腕も掴んだら折れそうだしよ」
黒子ははっと気づいて言った。
「青峰君、もしかして、さっき、僕が寝てた時・・・」
「ああ」
青峰はうれしそうに頷いた。
「いたづらしてた。おまえちっとも起きないのな」
黒子は真っ赤になって襟元を閉めた。
寝ている間、誰かに体を触られている感覚はあった。
すごく優しく柔らかなタッチをずっと感じていた。
気持ちいい、と思ったのだ。
やめないでほしい、もっと、もっとと。
その感覚を思い出して、黒子は体中が火照った。
「ちょっといたづらするだけのつもりだったんだが・・・
テツ、おまえがあんまり気持ちよさそうにしてるんで、俺もなんか、なぁ。
あれ以上やってたら、さすがにヤバイ、と思ってさ」
ヤバい、と言うわりに楽しそうに青峰が笑った。
「青峰君・・・」
「なぁ、教えてくれよ、テツ。おまえ、あの時誰だと思った?
誰に触られてるって感じてたんだ?」
青峰の息が耳元をくすぐる。
黒子は背中に青峰の肉体のぬくもりと重みを感じた。
青峰の熱い手が黒子の首筋にかかる。
なぶるような暗い眼でじっと黒子を見据える。
(めまいがしそうだ)
青峰の眼は肉食獣の眼だ。
自分は肉食獣の前に投げ出された獲物だ。
視線だけで射すくめられ、身動きがとれない。
食われる、と思った。
「何してんだ」
黒子に覆いかぶさる青峰の肩を、がっしりとした腕が掴む。
「・・・火神くん」
「気安く触ってんじゃねーよ」
青峰はさも嫌そうに、自分の肩を掴んだ火神の腕を振り払った。
「青峰、こんなとこで何やってんだよ」
火神は青峰を睨みつけた。
「あーあ、楽しいトコだったのに、邪魔されちまった。
なぁ、テツ?」
黒子はうつむいた。自分の腕をぎゅっと握りしめている。
「黒子、どうした?」
火神が心配そうに訊いた。
「大丈夫、何でもありません」
黒子が答えると、青峰が手の平を上に向けた。
「そう、今日はただあいさつに来ただけだ」
「あいさつ、だぁ?」
火神は胡乱な眼差しを青峰に向けた。
「ああ、ウィンター・カップ緒戦は、ウチとソッチだとさ」
青峰が告げた。
「緒戦が、桐皇?」
黒子と火神は驚いた。
まさか、初戦から青峰・・・?
「ふっ、初戦敗退ってわけだ。気の毒にな」
「なんだと」
火神が吠える。
「火神君」
黒子は今にも爆発しそうな火神の腕を取った。
「すみません、火神君、実は僕」
黒子はふっと笑った。
「今、『やった』って思っちゃいました」
「黒子・・・」
黒子の笑顔を見て、火神もハハッと笑った。
火神は青峰が飲み干したジュースの空き缶を取り上げ、こぶしで握りつぶした。
「だよなぁ。そんなの俺もいっしょだ」
バキバキと音を立ててペシャンコにつぶれた缶を、ゴミ箱に投げ入れた。
「ありがてぇ。こんなに早く借りを返すチャンスをもらえるとはなぁ」
「へぇ」
面白そうに青峰が笑った。
火神と黒子、並び立った二人を見た。
「いいぜ、受けてやる。今度はちったぁ楽しませてくれよ。なぁ、テツ?」
剣呑な青峰の視線を受け止めて、黒子は頷いた。
「はい、次は必ず青峰君を倒して僕たちが勝ちます」
ウィンター・カップ緒戦、桐皇、青峰、楽に勝てる相手ではない。
し烈な戦いになるだろう。
戦いの準備をしなくては、黒子は思った。
じきに冬が来る。
終わり
冷たく濡れた黒子の髪を誰かが触っている。
誰かが髪をそっとひっぱったり、絡ませたり
頭を撫でる優しいタッチがとても気持ちいい
いつか誰かにこんなふうに撫でられたことがある
とても安心できて信頼できる優しいタッチ
(覚えている、僕は覚えている)
そっと触れる、額から頬へ、頬から首筋に。
指先がからかうように、くるくると黒子の肌に円を描いた
そして胸元にしのんでくると、冷たい風を肌に感じて・・・
「冷たっ」
ヒヤッとした冷たいものが首筋にあたる。
その冷たさに黒子は覚醒した。
「いつまでも寝てんなよ。
あんまり起きねぇから、もっといたずらしちゃうとこだったぞ」
覚醒した黒子の目に飛び込んできたのは、よく知ってる、偉そうな顔だった。
「青峰君」
青峰大輝がそこに立っていた。桐皇のジャージ姿だ。
「ホラよ」
青峰は青いボトルに入れたポカリを黒子に寄こした。
首筋を触った冷たいものはこれか。
「飲めよ。どうせ風呂でのぼせたんだろ」
「ありがとうございます」
まだ少しくらくらしたが、なんとか起き上がった。
黒子は温泉に入ってのぼせてしまい、
火神にこのベンチに寝かせてもらったのだ。
火神は確か自販機でポカリが売り切れだったので、
どこかに買いにいったはずだ。
青い専用ボトルに入ったこのポカリは青峰が飲んでいたものだろう。
青峰のくれたポカリを一口飲んだ。
甘い飲料水がスーと体に沁みわたっていく。
黒子が白い咽喉をこくこくさせて飲むのを青峰はじっと見ていた。
「久しぶりだな、テツ」
黒子は口もとを手の甲でぬぐうと、青峰を見た。
「青峰君、なぜここにいるんですか?」
黒子の所属する誠凛高校のバスケ部は
ウィンター・カップ前のリフレッシュのため、この温泉に来ていた。
何でも監督の知り合いの経営する温泉だから、格安で泊まれたらしい。
「さあ、知らねぇ。俺はただ練習試合の後に、ここに連れて来られただけだ」
「桐皇は練習試合の後、この温泉に入りに来たんですか?」
「みてーだな。俺はバスの中で寝てたらここに連れて来られた。
他のやつらは温泉に入りにいったけど」
「青峰君はお風呂に入らないんですか?」
「だりぃからパス」
青峰は肩をすくめた。
「したら、テツ、お前がこんなとこでマグロみてぇに転がってたんで
びっくりしたぜ」
「僕も目が覚めたら青峰君がいたのでびっくりです。
でも、桐皇后は偶然僕らのいる温泉に来たんですか?」
「まぁ、まったくの偶然じゃないだろーな」
ガチャンと音がして、自販機の底に青峰の買った炭酸入りのジュースが落ちる。
青峰は昔から炭酸系のジュースが好きだ。
相変わらず飲み物には頓着しない。
アスリートはふつう炭酸入りの甘いジュースは飲まないのではないか。
「しかし、相変わらず細っこいな、テツ」
青峰はゴクゴクと咽喉を鳴らしてジュースを飲むと、
横目で黒子の首筋のあたりに目をやる。
黒子は自分の浴衣の襟元がはだけ、
自分の貧弱な体が露出しているのに気づくと、ばっと左右の襟をかき集めた。
確か、のぼせた自分にこの浴衣を着せてくれたのは火神だったはずだ。
「高校に入って少しはがっちりしてきたかと思ったんだけどな」
「これでも少しは筋肉つきました」
青峰は眉を上げた。
「へぇ、それで?」
残念ながら、黒子の体には筋肉がつきにくいようだ。
火神なんかは同じトレーニングしていても、筋肉が着実についていた。
肩や胸に筋肉量が増えているは目に見えてわかる。
青峰もそうだ。それほど練習しているようには思えないが、
きれいな筋肉が骨格を覆っている。
引き締まったアスリートの体というやつだ。
火神も青峰も、二人とも神様から授かった天性の身体を持っている。
黒子はため息をついた。これだけは不公平だと思う。
だが比べてもしようがない。黒子なりには成長してる。
筋肉だって多少はついて、体も少しはがっちりしてきたはずだ。
中学時代に比べれば。
「でも、まだまだ足りねーな。
そんなんじゃ、試合中押し倒されんじゃねぇのか?
胸なんかぺったんこじゃん、腕も掴んだら折れそうだしよ」
黒子ははっと気づいて言った。
「青峰君、もしかして、さっき、僕が寝てた時・・・」
「ああ」
青峰はうれしそうに頷いた。
「いたづらしてた。おまえちっとも起きないのな」
黒子は真っ赤になって襟元を閉めた。
寝ている間、誰かに体を触られている感覚はあった。
すごく優しく柔らかなタッチをずっと感じていた。
気持ちいい、と思ったのだ。
やめないでほしい、もっと、もっとと。
その感覚を思い出して、黒子は体中が火照った。
「ちょっといたづらするだけのつもりだったんだが・・・
テツ、おまえがあんまり気持ちよさそうにしてるんで、俺もなんか、なぁ。
あれ以上やってたら、さすがにヤバイ、と思ってさ」
ヤバい、と言うわりに楽しそうに青峰が笑った。
「青峰君・・・」
「なぁ、教えてくれよ、テツ。おまえ、あの時誰だと思った?
誰に触られてるって感じてたんだ?」
青峰の息が耳元をくすぐる。
黒子は背中に青峰の肉体のぬくもりと重みを感じた。
青峰の熱い手が黒子の首筋にかかる。
なぶるような暗い眼でじっと黒子を見据える。
(めまいがしそうだ)
青峰の眼は肉食獣の眼だ。
自分は肉食獣の前に投げ出された獲物だ。
視線だけで射すくめられ、身動きがとれない。
食われる、と思った。
「何してんだ」
黒子に覆いかぶさる青峰の肩を、がっしりとした腕が掴む。
「・・・火神くん」
「気安く触ってんじゃねーよ」
青峰はさも嫌そうに、自分の肩を掴んだ火神の腕を振り払った。
「青峰、こんなとこで何やってんだよ」
火神は青峰を睨みつけた。
「あーあ、楽しいトコだったのに、邪魔されちまった。
なぁ、テツ?」
黒子はうつむいた。自分の腕をぎゅっと握りしめている。
「黒子、どうした?」
火神が心配そうに訊いた。
「大丈夫、何でもありません」
黒子が答えると、青峰が手の平を上に向けた。
「そう、今日はただあいさつに来ただけだ」
「あいさつ、だぁ?」
火神は胡乱な眼差しを青峰に向けた。
「ああ、ウィンター・カップ緒戦は、ウチとソッチだとさ」
青峰が告げた。
「緒戦が、桐皇?」
黒子と火神は驚いた。
まさか、初戦から青峰・・・?
「ふっ、初戦敗退ってわけだ。気の毒にな」
「なんだと」
火神が吠える。
「火神君」
黒子は今にも爆発しそうな火神の腕を取った。
「すみません、火神君、実は僕」
黒子はふっと笑った。
「今、『やった』って思っちゃいました」
「黒子・・・」
黒子の笑顔を見て、火神もハハッと笑った。
火神は青峰が飲み干したジュースの空き缶を取り上げ、こぶしで握りつぶした。
「だよなぁ。そんなの俺もいっしょだ」
バキバキと音を立ててペシャンコにつぶれた缶を、ゴミ箱に投げ入れた。
「ありがてぇ。こんなに早く借りを返すチャンスをもらえるとはなぁ」
「へぇ」
面白そうに青峰が笑った。
火神と黒子、並び立った二人を見た。
「いいぜ、受けてやる。今度はちったぁ楽しませてくれよ。なぁ、テツ?」
剣呑な青峰の視線を受け止めて、黒子は頷いた。
「はい、次は必ず青峰君を倒して僕たちが勝ちます」
ウィンター・カップ緒戦、桐皇、青峰、楽に勝てる相手ではない。
し烈な戦いになるだろう。
戦いの準備をしなくては、黒子は思った。
じきに冬が来る。
終わり
3/21
プロフィール

- ニックネーム
- うり
- 性別
- 腐女子
- 血液型
- B型
- 自己紹介
- 本が大好きな主婦です。黒子のバスケなんかの二次小説を書いています。
- 趣味
- 犬と遊ぶこと。映画を観ること。音楽を聴くこと。走ること、と言いたいが、最近走れない…
- 特技
- 動物には好かれる方
- 職業
- 事務職
- 座右の銘
- 人事を尽くして神様にお願いする
最近の記事一覧
カテゴリー
携帯用QRコード