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小説

テニスの王子様

キスの化学反応

これも『好きでいいよね』に載せた話の一つです。もともとは『ぼくの好きな先生』っていうタイトルでした。パソコンの中に眠っていた物語を少しだけ変えてみました。 手塚に白衣を着せたら?手塚が先生だったら?という妄想から書いた話。 ちょっとだけ

白衣を羽織った長身の化学教師はため息をついた。
「越前君、どうしてここに呼ばれたかわかっているね?」
越前と呼ばれた小柄な少年の名は越前リョーマ。リョーマはしれっとした顔で答えた。
「手塚先生がオレに会いたかったから?」
「・・・間違ってはいない。確かに私は君に会いたかった。だから化学準備室に呼んだ。では、なぜ私は君に会いたかったのだろう?なぜだと思う?」
「たぶん、オレが可愛い生徒だから」
辛抱強く冷静に手塚は答えた。
「・・・たぶんそれも間違ってはいない。だが、ここに呼んだのはそれが理由ではない。先週のテストについて君と語り合いたい、そう思ったからだ」
「つまり、補習?ってこと?先生、次のテストはちゃんとやるから、補習はカンベンして」
リョーマは両手を合わせて背の高い手塚を拝んだ。
長身の手塚と小柄なリョーマでは、身長差がかなりある。
手塚は眼鏡ごしに冷たい視線をリョーマに注いだ。
「なら越前君、君は何しに来たんだ?」
「決まってるじゃん。」リョーマはにっこりと笑う。
「先生に会いに来たんだ。久しぶりだね、先生」
「久しぶり、とは言えないね」
手塚は背中を向けて、化学準備室の器材を棚にしまい始めた。ピカピカに磨かれたビーカー、フラスコ、きれいな長い指が壊れやすいガラス製の器を器用に片付けていく。
「君とは毎日学校で会ってるから」
「じゃあ、先生はホントに補習のためだけにオレを呼んだの?」
白衣の背中に向けて問いかける。手塚はリョーマにかまわず作業を続けている。
「素直じゃないなぁ」
リョーマがふくれっ面でつぶやいた。咎めるような響きに手塚は眉を上げた。
「先生って、冷たいよね。オレ達、授業以外で会うのってこれが二週間ぶりなんだよ」
不満が爆発しそうなリョーマの気配を感じ取って、手塚はため息をついた。
「君は先週までテスト週間だっただろう?」
「テストは先週で終わったよ」
「そう、終わったんだ。結果、私は君に補習を課さなければいけなかった。言っておくが、三十点以下は君だけだ」手塚は淡々と事実を述べた。
「オレだけ?フーン。みんな、なんだか先生の授業だけは真面目に聞いてるからなあ。知ってる?先生って、意外と人気あるんだよ、女子にも男子にも」
「君にもぜひ授業を聴いてもらいたいね」
「次からは聞くよ」
「そう願いたいね」
手塚は実験器具をすべて棚の中に片づけてしまうと、着席するようにリョーマを促した。
「では、越前君、そこに座って」
狭い化学準備室には、実験用の大きな机が一つと椅子が二客しかない。リョーマはしぶしぶ、その一つに腰をかけた。「やっぱり補習するんだ」
「せっかく二人っきりなのに」と小さくぼやきながら。
手塚はもう一つの椅子をリョーマの方に寄せて腰かけた。
寄り添うように体を寄せてきた手塚に、リョーマの心臓がトクンと跳ねた。
「では、補習を始めよう」と手塚が耳元に囁いた。
リョーマの顔がほころんだ。甘い期待で胸が高鳴る。
「はい、先生」
手塚は小柄なリョーマを抱き取るように、自分の膝に乗せ、すべすべしたリョーマの頬にキスした。
「キスの化学反応が解明されたそうだ」
手塚はリョーマの耳に唇をつけて囁いた。耳元に手塚の熱い息がかかる。
「キスの化学反応、何それ」
「ジョークみたいだが、本当の話だ。キスすると複雑な化学反応が起きるんだ。アメリカの人類学者がカップルを使って実験した。」
「そんなヘンな実験する学者っているんだ」
手塚の息が耳元をくすぐるたびにリョーマは身をよじった。耳はリョーマの弱点だ。手塚はそれを知っている。
「そうでもない。いい実験だと思う。試してみようか?」
甘く誘惑するように手塚がリョーマを見つめた。
手塚の視線に絡めとられてしまう。
「うん、キスして」
自分からねだるように唇をさしだすと、手塚はリョーマを力強く引き寄せた。
(先生のまつげ長いな)
キスの直前にリョーマが思ったのはそれだけで、後は荒れ狂う嵐に飲みこまれるように、何も考えることができなくなった。
鳥がついばむような優しいキスではなかった。
唇ごと食べられてしまうような熱いディープなキス。
触れあっている口腔の粘膜が溶け出してしまいそうだ。
(これが欲しかったんだ)
リョーマは、でももっと欲しいと願った。
これじゃ足りない。まだ満たされない。
(だって、ずっと会えなかったんだから)
手塚の熱い舌がリョーマの口の中に侵入し、敏感で柔らかな粘膜を愛撫した。危険な愛撫だ。リョーマは息をすることもできなくてクラクラした。
酸欠状態になったリョーマをようやく手塚は解放した。リョーマの手首に指を当てている。
「90だな。心拍数上昇、顔は上気し、体は熱っぽい。ほら、君の体はキスに反応するんだ」
リョーマはまだキスの余韻にボーとしていた。
手塚はそっとリョーマの赤く濡れた唇に人差し指をあてた。「腫れてしまったな、痛そうだ」
リョーマの唇は痛いほどに熱くてジンジンしていた。快感と苦痛は紙一重だ。
手塚は熟れた唇にもう一度、今度はごく優しく唇を重ねた。リョーマもそれに応える。軽く触れ合うだけなのに唇が熱い。
「先生、これホントに実験」
「そうだよ。ありがとう。実験は成功だ」
手塚は真面目ぶった顔で答えた。
「なーにが実験だか?このエロ教師」
「人類学者の実験では、キスをすると愛のホルモンが増加するそうだ」
「愛のホルモンって?」
「オキシトシン。オキシトシンが増加して、コルチゾルが減少する。コルチゾルはストレスのホルモン。だから、キスをするとストレスから解放される」
「へー。ホント?キスってストレスに効くんだ」
リョーマの大きい目がくるりと回る。
「さあ、どうだろう」手塚はどうでもいい、というように言った。
「だが、少なくとも、私には効果があるようだ」
とリョーマの頬を手をあてる。器用そうな長い指が、リョーマのなめらかな肌をそっと愛撫した。
そんな軽い愛撫にさえ、リョーマの体は反応してしまう。
「先生が変態だから、だよ」
「私が変態?」
「うん、変態教師だ。それに不良教師だし」
「確かにそのとおりだ。生徒に手を出す悪い教師だ」
「それにエロ教師だし?」
「そうか?私はエロ教師かな?」
「うん、すごくエロいよ。オレ、先生がオレのことエロく触るから、オレはすぐにヘンになっちゃうんだ」
「エロ教師は嫌いか?」
手塚は低い声で問いかけながら、リョーマの瞳の中に答えを求めた。
手塚が言わせようとしている言葉は分かっていたけれど、リョーマは言わなかった。
(だってそんなの訊かなくてもわかってるじゃん)
「嫌いって言ったら、どうする?」
「さあ、どうしようか?」
手塚はリョーマの顎を少し持ち上げて、いたぶるように瞳の中をのぞき込んだ。
「君はどうしてほしいのかな?」
「言われなきゃわかんないの、先生。ずいぶん鈍感だね」リョーマが挑発した。
手塚は眉をあげた。
「可愛くないことを言う。悪い生徒には、特別授業をしないとね」
そういうと手塚は膝に抱いたリョーマにかがみこんだ。リョーマの唇はさっさのキスで赤く熟れ、待ち焦がれれたように手塚を迎えた。
「う・・・ん」
唇がしびれるようだ。触れた唇から熱がじんわりと広がっていく。密着している柔らかな粘膜がチュッと音を立てて、そのいやらしい音がよけいにリョーマを夢中にさせた。
「せんせい・・・せんせい」掠れた声で手塚を呼んだ。
「なに?」手塚の低い声が鼓膜を震わせる。
「ン・・名前、呼んで。」
手塚の唇の中、とぎれとぎれにリョーマは懇願する。
「越前君?」
「違う、オレの名前、オレだけの名前を呼んでほしい」熱っぽくうわずった声がねだる。誰がこの熱に逆らえるのだろう?
手塚はリョーマの耳元で囁く。リョーマが望むままに、何度も何度も。
「リョーマ」と。
耳に熱い吐息がかかる度に、手塚の腕の中のきゃしゃな体はピクっと震えてしがみついてくる。
(感じやすい体だ)
手塚がこれまでにリョーマに与えた快感はキスと軽い愛撫だけだった。
これ以上の行為に及ばないのは、教師と生徒という職業意識でも、世間体でも、罪悪感からでもない。
手塚はリョーマと恋愛関係にあることに、後悔も罪悪感もかけらも感じていなかった。そんなものを感じるくらいなら、初めから愛したりしない。
ただ、キスだけでこんなに反応するリョーマに、これ以上のことをしたらどうなってしまうのか、それが恐ろしかった。
焦ることはない、お楽しみはゆっくりでいい。
「リョーマ、愛してるよ」
囁くとリョーマは満足そうにほほ笑んだ。
やっと、やっと満たされた、というように。
テスト期間中、会いに来ることを禁止された。
二週間、手塚とは授業で顔を会わせるか、廊下ですれ違うか。こうして二人っきりで手塚に会うことも叶わず、リョーマは淋しかった。飢えていたのだ。
今はお腹のいっぱいになった猫みたいにゴロゴロとのどを鳴らしたい気分だ。
「ふふふ・・・先生、ホントにコレが補習なの?キスの化学反応って」
「ああ、君の化学反応はすごく興味深い。もっと実験したくなる」
「いいよ、試してみて」リョーマは手塚の耳に口をあて、告白するように囁いた。
「オレ、先生の授業大好き。こういう授業ならね・・・」
「好きなのは授業だけかい?」
「あ・・ん・・・大好き、先生」
手塚の指が器用に動いて、シャツの隙間から素肌をくすぐった。きれいな指の先が、リョーマの胸の一か所を探り当てると、そっとつまんだ。
「や・・・」声が出てしまう。
手塚はそのとがったその場所だけを指先で優しくこすったり、はじいたり、つまんだりと丁寧に愛撫する。
「あっ・・・」
リョーマは耐えられないというように手塚の腕の中で快感に身を捩る。
「ほら、こんなになって」と手塚はリョーマのぷくんと腫れた胸の飾りをシャツの上から示した。
「わかるだろう?君の体中で化学反応が起きてるんだよ」
「やっぱり、エロ教師だ。生徒を実験材料にするなんて、悪い先生だよね」
「そうだよ、私はいけない先生だ」
そう言って、手塚は罰のようにぎゅっとリョーマの敏感になった先端をつまむ。
「やっ、痛い」
リョーマは苦痛と快感は紙一重だということを若い体で知った。快感を知ったその場所に手塚が痛みを与える。一瞬鋭い痛みを感じた後に、甘い痛みがじんわりと広がっていくのだ。
手塚は、痛みと快感にリョーマの体は翻弄されていく。
息が荒くなり、リョーマは時折、「やだ、やだ」と喘いだ。じれったい、もっと欲しいと願ってしまう。
手塚は快感に喘ぐリョーマに冷淡に「もうやめようか?」と言って、指を離した。
手塚の指が離れていくと、淋しくなったリョーマは夢中で首を振る。「だめ、やめないで」
「欲張りな子だね、君は」手塚が密やかに笑う。
「では君望む通り君の欲しいだけ快感を与えてあげよう」
手塚はリョーマの白いシャツのボタンを器用に外しながら、再びキスをした。
リョーマの肌が露になった。
言葉も熱い吐息はも、深くなった手塚のキスの中に消えて行き、やがてとぎれとぎれの喘ぎ声だけが睦言になり、小さな部屋に響いていた。
そろそろ太陽が沈む頃だった。
射し込む夕陽に邪魔されたくはない、手塚はリョーマを腕に抱いたまま手を伸ばし、そっと化学準備室の厚いカーテンを引いた。
すると闇がやってきて、二人を覆い隠した。

                   おしまい
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プロフィール

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ニックネーム
うり
性別
腐女子
血液型
B型
自己紹介
本が大好きな主婦です。黒子のバスケなんかの二次小説を書いています。
趣味
犬と遊ぶこと。映画を観ること。音楽を聴くこと。走ること、と言いたいが、最近走れない…
特技
動物には好かれる方
職業
事務職
座右の銘
人事を尽くして神様にお願いする

ブログ

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