心惹かれるきくのさんの俳句
春眠のあざやかすぎしゆめの彩
古日傘われから人を捨てしかな
まゆ玉にをんな捨身の恋と知れ
夏痩せてひとりは覚悟死ぬ日にも
きくのの俳句は、恋する女の情念を詠みあげ、胸に迫る句が多い。いつしか、彼女の俳句に心惹かれ、歳時記から拾ってはノートに書きとめた。
しかし、彼女の人生を追って調べていくと、恋愛の句だけではなく、家族を思う句や、自然や花を詠んだ句も多く、ユーモアに富んだ随筆も残している。この人は向学心があり、スポーツも好きで、近代的な自由人でもあった。
厳しい戦争時代にも花を愛する風流な心を失わず、俳句仲間とも生涯にわたる友情を築き上げてきた。かつて女優であったが、女優を辞めてからも演劇や芸能に関心を持ち、舞台の批評なども書いた。
ここでは、稲垣きくのの俳句を紹介しつつ、その人生や、社会での出来事を順に追っていきます。
なお、この評伝を書くにあたって、現在では不適切と思われる表現がありますが、時代背景や当時の著者の立場などを考慮し、原本のままとしました。敬称も略させていただきます。よろしくご理解のほどお願い申し上げます。
